古代ローマのコイン―入門書の紹介―

  古代ローマの歴史は、およそ2000年に亘って地中海を中心に繰り広げられ、多くの歴史家(日本人も含む)によって語られ日本でもたくさんの本が出版されています。しかし、そこで利用された貨幣については、日本語で記された本格的な専門書を見つけることができませんでした。
日本の古代コインが古代ローマのコインほど歴史を語りかけてくれないところに貨幣研究者が育ちにくい要因があるのかも知れません。学校の歴史授業の中でもその重要性を問われたことは無いような気がします。
 真贋もわからずローマコインを手に入れその魅力のとりこになってしまうのですが、コインに刻まれている文字の意味について全く理解できません。知りたいと思う欲望が強くなり海外から数冊の本を取り寄せるところから始めざるを得ませんでした。
最初は、紀元前後に鋳造されたコインであると認識しても日本的歴史観が優先するのかさほどの感動を覚えませんでした。時間が経過するにしたがって歴史的な重みを感じるようになり、その後は気づいたら没頭している自分がいました。
 ここでは、海外の多くの貨幣研究者の方々の中からDavid R.Sear氏の書物を紹介させていただいております。次の項で述べる貨幣の大分類等も彼の書物を中心に参考にしながら貨幣の種類や時代区分を分類しました。彼は、初心者向けの書物をたくさん出版し多くの評価を得その世界の第一人者として著名だからです。

現在、彼のローマコインに関する連載書物
書籍名対象期間登場人物参考photo発行期
ROMAN COINS
and their values
 販売中
B.C.5世紀〜96A.D.B.C.5世紀〜
ドミティアヌス帝
1964年
ROMAN COINS
and their valuesU
 販売中
96A.D.〜235A.D.ネルウァ帝〜
アレクサンデル・
セウェルス帝
1970年
ROMAN COINS
and their valuesV
235A.D.〜285A.D.マクシミヌスT帝〜
カリヌス帝
2005年
ROMAN COINS
and valuesW
284A.D.〜337A.Dディオクレティアヌス帝〜コンスタンティヌス帝
2011年
BIZANTINCOINS491A.D.〜1453A.D.アナスタシウスI世帝
〜コンスタンティヌスXI世帝
1974年
 

1.Roman Coins and Their Values の記載事例


2.ROMAN COINS AND THEIR VALUESの出版経緯

ROMAN COINS AND THEIR VALUESは、Spink社ではなくSeabyによって1964年に出版されています。第2巻は1970年、現在の仕様になったのは1988年です。第3巻の出版が2005年とかなりの期間を経ていました から第4巻の発行は、かなり厳しいとの見方が一般的でした。なんと今年の2011年3月に出版されました。長い期間を経なければ出版できなかった理由としては著作者であるデービット・シア氏の個人的な問題だけではなく歴史あ る出版社SPINKが衰退の一途を辿ってしまった要因に原因があるのではないかと推察しております。

―日本人 西洋貨幣研究家の紹介―

古代ローマコインの収集入門書としてDavid R. Sear氏の書籍を紹介させていただきましたが、貨幣の種類等を記述する上でとても参考にさせていただいた書物があります。
古代ローマコインの専門書ではないのですが、日本人が翻訳本でなく西洋の貨幣について専門的に著述した唯一のものではないかと思っています。その書名等は、次のとおりです。
書物名:西洋貨幣史(3巻)
作者名:久光重平 出版社:国書刊行会 発刊時期:平成7年
氏は、貨幣研究や歴史研究の専門家でもなく大蔵省造幣局長等を歴任された大蔵官僚のご出身なのです。
刊行にあたってのところで氏の言葉として次のように述べられています。
貨幣の研究は、興味または審美の対象としてのみならず、歴史的実証として、歴史文献を補完するものとして評価される。