ビザンツ帝国の金貨


クリスチャン皇帝として名高いコンスタンティヌス大帝が通貨改革によって創始したソリドゥス金貨はローマ帝国が東西に分裂、蛮族の侵入によって崩壊した後もコンスタンティノポリスを中心に国際的な基軸通貨として１１世紀まで存続しました。
A.D.４９８年〜A.D.９６３年
ビザンツ帝国の金貨　ソリドゥス（solidus）（第Ｉ期）

４９８年　経済の建て直しを図るため、アナスタシウス帝は通貨改革を断行し銅貨（Follis）の貨幣単位をヌンムスとして発行する新貨幣制度を導入しましたが金貨については変更を加えることはありませんでした。
ユスティニアヌスI世からコンスタンティヌスIV世まで２３,２２,２１シリクァ対応の軽量ソリドゥス金貨（1ソリドゥス＝24シリクァ）が発行されていますが現在でもその目的については明らかになっておりません。

宗教的イベントでは次のようなコインが発行されています。
ユスティニアヌスII世（685-711年）の時に初めてキリストの像がコイン上に描かれています。
レオVI世（886-912年）の時初めて聖母マリアがコイン上に描かれています。
アレクサンデルスIII世（912-913年）の時初めて聖者がコイン上に描かれています。
貨幣の種類価値素材重量
（目安）
  ソリドゥス（solidus） 24シリクァ  金（Gold） 4.48ｇ前後　
  セミシス（Semissis） 12シリクァ  金（Gold） 2.24g前後
  トレミシス（Tremissis） 8シリクァ  金（Gold） 1.12g前後　


Photo説明Ｐｈｏｔｏ
　  >>>ソリドゥス（solidus）  4.47 g<<<　　

【コイン表】D N ANASTA SIVS PP AVG　： 　-右肩上に槍を担ぎ左手に盾を持ちヘルメットを被り真珠で装飾された胴鎧を身につけた アナスタシウス帝の肖像。
【コイン裏】VICTORI A AVGGG　：右手に長い十字架を持つヴィクトリィ神が描かれています。 コインフィールド右サイドに＊、コイン下部にMintマークを表わすCONOBの文字が打刻されています。
A.D.492-507発行 。Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)
　  >>>ソリドゥス（solidus）  4.37 g<<<　　

【コイン表】+IhS XPS REX REԿ NANTIՎ M　： 　-　祝福のため右手を上げ左手に福音書を持つ十字架を負ったイエス・キリストの肖像。
【コイン裏】レジェンド確認できず：コイン左サイドにロロスを着たコンスタンティンVII世、右サイドにクラミスを身に着けたロマノスII世、そして中央に二人で支えあうペイトリアーク形の十字架が描かれています。
A.D.959発行 。Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)
　  >>>ソリドゥス（solidus）  4.45 g<<<　　
    イエス・キリストがコイン上に初登場
【コイン表】IhS CRISTOS REX REGNANTIUM　： 　　パルリウムとコロビウムを着け祝福の右手をあげ左手に福音書を持ち十字架を負ったキリストの肖像。
【コイン裏】D IVSTINIANUS SERUS CHRISTI ：三階段上の丁字型の十字架を右手で支えロロスを着けたユスティニアヌスII世の立像が描かれています。
A.D.692-695発行 。Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)
　  >>>ソリドゥス（solidus）  4.14 g<<<　　
    聖母マリアがコイン上に初登場
【コイン表】+ mARIA +　： 　　聖母マリアの肖像。コインフィールドに MR ΘЧ, の文字が打刻されています。
【コイン裏】LEOh Eh CRISTO bASILEЧS ROmEOh ：宝石で装飾されたクラミスを着け右手に宝珠上の十字架を持ち帝冠を被ったレオVI世の肖像が描かれています。
A.D.886-908発行 。Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)
　  >>>ソリドゥス（solidus）  4.35 g<<<　　
    聖者がコインに初登場
【コイン表】+IhS XRS REX REGnAnTIUM ： 　左手に福音書を持ち祝福のため右手をあげ竪琴型の背もたれのついた玉座に座しているイエス・キリストが描かれています。
【コイン裏】+ALEXAnd ROS AUGUSTOS ROM ：宝珠上の十字架を右手に持ち十字架付きの帝冠を被り十字架がデザインされたロロスを着けたアレクサンデル帝がコイン左サイドに描かれています。そしてその帝に対し 左手に十字架を持ち右手で帝冠を載せている裸足の聖人アレクサンデルが描かれています。
A.D.912-913発行 。Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Gemini, LLC
　  >>>セミシス（Semissis）  2.25 g<<<　　

【コイン表】D N IVSTINIANUS PP AVG　： 　-皇帝のマントを羽織り胴鎧を身につけ真珠の王冠を戴いたユスティニアヌスI世の肖像。
【コイン裏】VICTORI A AVGGG　：ヴィクトリア神の坐像が描かれています。コイン左サイドに＊、コイン 右サイドにクリスチャンモノグラム、コイン下部にMintマークのCONOAが打刻されています。
A.D.527-565発行 。Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)
　  >>>トレミシス（Tremissis）  1.51 g<<<　　

【コイン表】D N IVSTINIANUS PP AVG　： 　-皇帝のマントを羽織り胴鎧を身につけ真珠の王冠を戴いたユスティニアヌスI世の肖像。
【コイン裏】VICTORIA AVGSTORVM　：左手に宝珠上の十字架を持ち右手にリースを持つヴィクトリア神の立像が描かれています。コイン右サイドに＊、コイン下部にMintマークのCONOBが打刻されています。
A.D.542-565発行 。Mint-テッサロニカ

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)




A.D.９６３年〜A.D.１０８１年
ビザンツ帝国の金貨　テタルテロン・ノミスマ（Tetarteron Nomisma）
（第ＩI期）


ニケフォルスII世（963-969年）は、正規のソリドゥスの重量より1/12だけ少ない新金貨テタルテロン・ノミスマを発行しています。
従来のソリドゥスは、ヒスタメノン・ノミスマという呼称が与えられました。
バシレイオスII世（976-1025年）は標準的な重量より重い新金貨ヒスタメノン・ノミスマを発行します。しかし金貨の品位は悪化が止まらず貨幣改革を実施したアレクシウスI世の頃には金の純度は26％にまで減少したのでした。
貨幣の種類>価値素材重量
（目安）
 テタルテロン・ノミスマ（Tetarteron Nomisma） 24シリクァ  金（Goldcopper） 　4.1g前後
 ヒスタメノン・ノミスマ（Histamenon Nomisma） 24シリクァ  金（Goldcopper） 　4.48g前後


Photo説明Ｐｈｏｔｏ
>>>テタルテロン・ノミスマ（Tetarteron Nomisma）- 4.01 g<<<　　　

【コイン表】：+ΘKE ROHΘ - 光背を負った幼児のキリストを胸に抱く聖母マリアが描かれています。
【コイン裏】：レジェンド確認できず - 帝冠を戴いたロマノスIV世とエウドキアの肖像、中央に宝珠上の大きな十字架が描かれています。
1068-1071発行。　Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)
>>>ヒスタメノン・ノミスマ（Histamenon Nomisma）- 4.40 g<<<　　　

【コイン表】：+IhS XPS REX REԿ NANTIՎ M　 - 祝福のため右手を上げ左手に福音書を持つ十字架を負ったイエス・キリストの肖像。
【コイン裏】：+Θ EOTOC bHΘ nICHF δ ESP - 光背を負った聖母マリアと帝冠を戴きロロスを着けたニケファロス帝が中央のペイトリアーク形十字架を支え合っている様子が描かれています。
963-969発行。　Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)
>>>ヒスタメノン・ノミスマ（Histamenon Nomisma）- 4.43 g<<<　　　

【コイン表】：+IhS XIS REX REԿ NANTInm - 祝福のため右手を上げ左手に福音書を持つ十字架を負ったイエス・キリストの肖像。
【コイン裏】：+bASIL C CONSTANT bR - 中央の十字架を支え合うバシレイオスII世とコンスタンティニスVIII世が描かれています。
1005-1025発行。　Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)



A.D.１０８１年〜A.D.１３９１年
ビザンツ帝国の金貨　ヒュペルピュロン（Hyperpyron）（第III期）


アレクシウスI世（1081-1118年）コムネノス朝は貨幣改革によって純度83％の新金貨ヒュペルピュロン（Hyperpyron）を発行します。この改革も歯止めにはならずミカエルVIII世（1261-1282年）パレオロゴス朝の治世で純度62.5％、アンドロニコスII世（1282-1328年）パレオロゴス朝の治世で純度50％等、様々な劣化金貨が発行されることとなりヨハネスV世（1341-1391年）パレオロゴス朝の治世においてビザンツ帝国最後の金貨発行の時を向かえ帝自ら廃止宣言を行ったのでした。
貨幣の種類>素材重量
（目安）
 ヒュペルピュロン（Hyperpyron）  金（Gold） 　4.4g 前後
 エレクトロン・アスプロン・トラッキィ（EL Aspron Trachy）  金（Gold） 　4.4g 前後


Photo説明Ｐｈｏｔｏ
>>>ヒュペルピュロン（Hyperpyron）- 4.39 g<<<　　　

【コイン表】：+KE ROHΘ EI - 左手に福音書を持ち祝福のために右手を上げるイエス・キリストの坐像。
【コイン裏】：レジェンド無し - 左手に宝珠上の十字架を右手にラバルム付きの笏杖を持つ大きな宝石が散りばめられたクラミスを着たアレクシウスI世の立像が描かれています。
A.D.1092-1118発行 。 Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)
>>>ヒュペルピュロン（Hyperpyron）- 3.48 g<<<　　　
        ビザンツ帝国　最後の金貨

【コイン表】：レジェンド無し - シティゲイトの中に聖母マリアの肖像が描かれています。
【コイン裏】：レジェンド確認できず - イエス・キリストが膝まづくヨハネスV世とヨハネスVIの祝福している様子が描かれています。
A.D.1347-1353発行 。 Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)
>>>ヒュペルピュロン（Hyperpyron）- 4.00 g<<<　　　

【コイン表】：レジェンド無し - 六つの塔を備えたシティゲイトの中に聖母マリアの肖像が描かれています。
【コイン裏】：レジェンド確認できず - 聖人ミカエルが膝まづくミカエルVIII世を支え光背を負ったキリストがミカエルVIII世の頭に右手を当てながら祝福している様子が描かれています。
A.D.1261-1282発行 。 Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)
>>>エレクトロン・アスプロン・トラッキィ（EL Aspron Trachy）- 4.32 g<<<　　　

【コイン表】：レジェンド無し - 祝福のため右手を上げ左手に福音書を持つ光背を負ったイエス・キリストの座像。
【コイン裏】：レジェンド確認できず - 中央のペイトリアーク形十字架を支え合うマヌエルI世と聖母マリアの立像が描かれています。
A.D.1152-1167発行 。 Mint-コンスタンティノポリス

写真提供：Classical Numismatic Group, Inc. (CNG)




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